Appleが公開している「Wi-Fi specifications for Apple devices（日本語タイトル：AppleデバイスのWi-Fi仕様）」が2024年9月25日付で更新され、同月発売されたWi-Fi 7（IEEE 802.11be）対応のiPhone 16シリーズに関する情報が追加されました。
AppleデバイスのWi-Fi仕様 - Apple サポート (日本)
Wi-Fi specifications for Apple devices - Apple Support
まず注目したいのはMaximum PHY data rate（最大PHYデータレート）です。iPhone 16シリーズでWi-Fi 7を利用した場合の通信速度は6GHz帯・5GHz帯が最大2,400Mbps、2.4GHz帯が最大229MbpsでWi-Fi 6E（IEEE 802.11ax）対応のiPhone 15 Proと変わりません。
Wi-Fi 7に対応したにも関わらずiPhone 16シリーズとiPhone 15 Proで最大速度が同値となる要因はMaximum channel bandwidth（最大チャンネル帯域幅）とMaximum MCS index（最大MCSインデックス）の各項目にあります。
Wi-Fi 7では規格上の最大帯域幅がWi-Fi 6/6Eの160MHzから320MHzに倍増しており、この変更によってWi-Fi 7対応機器では空間ストリーム数を維持しつつ最大通信速度を大きく引き上げることが可能になりました。しかしiPhone 16シリーズでは320MHz幅での通信がサポートされておらず、これが通信速度をiPhone 15 Proと同等に留める最大の要因となっています。
また、同様にWi-Fi 7で導入された新要素として4096QAMがあり、1024QAMを用いるWi-Fi 6/6E比で20%の速度向上が図られています。しかしながらiPhone 16シリーズでサポートされている6GHz帯・5GHz帯のMCS Index（Modulation and Coding Scheme Index：利用可能な変調方式と符号化の組み合わせを示す値）は最大11で、4096QAMを含むMCS Index 12/13には非対応、すなわち4096QAMを利用できない状態となっています。また、2.4GHz帯のMCS Indexは最大9で、iPhone 15シリーズ以前のモデルと同じく1024QAMにも対応せず256QAMでの通信となります。（MCS Indexと空間ストリーム数ごとのスループットの一覧は https://mcsindex.net/ で確認できます）
最大帯域幅と変調方式を除くと単一周波数帯での通信速度を引き上げるために残された手段は空間ストリーム数（アンテナ数）を増やすことですが、これも発表段階で明らかになっていた通り従来モデルと同一の2ストリーム構成です。これらの要素がiPhone 15 Proと等しいため、結果として通信速度はiPhone 15 Proと同じ最大2,400Mbpsに留まっています。
なお、複数の周波数帯を組み合わせて利用するMLO（Multi-Link Operation）はiPhone 16シリーズの全モデルでサポートされているとのことですが、Appleのサイトで確認できるMLO関連の記述は以下の一文のみであり、詳細な実装状況は公開されていません。
All iPhone 16 models support Wi-Fi 7 in the 2.4 GHz, 5 GHz, and 6 GHz bands and Multi-Link Operation (MLO).
https://support.apple.com/guide/deployment/wi-fi-specifications-for-apple-devices-dep268652e6c/web
ネット上にはeMLSR（Enhanced Multi-Link Single-Radio：単一の無線インターフェイスで複数の周波数帯を扱い、状況に応じて任意の単一周波数帯で通信を行うモード）により6GHz帯と2.4GHz帯、もしくは5GHz帯と2.4GHz帯を組み合わせたリンクの確立は行われるものの、実際に帯域を切り替える挙動は確認できないとの検証結果も投稿されています。
Does iPhone 16 support Wi-Fi 7 Multi-Link Operation (MLO)? - Jiri Brejcha
iPhone 16全系列的WiFi7都是只支持160Mhz和2.4G和5G/6G MLO的阉割货 - 电脑讨论(新) - Chiphell - 分享与交流用户体验
