Android/iOSスマートフォンにおけるWi-Fi 7の対応状況をまとめています。製品ごとの対応帯域幅や搭載SoCについても確認できる範囲で整理しています。
Wi-Fi 7とは
Wi-Fi 7はIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が定めるIEEE 802.11beに基づくWi-Fiの実装であり、帯域幅の拡張、変調方式の高度化、複数帯域の同時利用といった手段で最大スループットの向上が図られています。
従来のWi-Fiは原則として親機(AP)と子機(STA)が通信する際に単一の周波数帯を用いていましたが、Wi-Fi 7で新たな機能としてMLO(Multi-Link Operation)が導入され、同時に複数の周波数帯を用いた通信を行えるようになりました。異なるデータを同時に転送することによる最大スループットの向上や、同じデータを異なる周波数帯で転送することによる信頼性・冗長性の向上が期待されます。
また、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)では160MHzだった最大帯域幅が320MHz(6GHz帯のみ)に、変調方式が1024QAMから4096QAMに引き上げられ、MLOを使用しない単一周波数帯でのスループットもWi-Fi 6に比べて向上しています。
日本では2023年12月の制度改正によって320MHz幅での通信が可能となり、新たな基準に則した製品ではフルスペックのWi-Fi 7を利用可能になっています。
Wi-Fi 7対応製品一覧
製品名にカッコが含まれている場合は仕様を参照したモデルの投入先地域を示しています。地域によっては同名の製品でも規格・周波数帯が利用できない場合があるため注意が必要です。
メーカー | 製品名 | 最大帯域幅 | 6GHz帯 | SoC | 国内発売 |
---|---|---|---|---|---|
Apple | iPhone 16 iPhone 16 Plus | Apple A18 | ○ | ||
Apple | iPhone 16 Pro iPhone 16 Pro Max | Apple A18 Pro | ○ | ||
ASUS | Zenfone 11 Ultra | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ※1 | |
ASUS | Zenfone 10 | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | ※1 | |
ASUS | ROG Phone 8 ROG Phone 8 Pro | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ※1 | |
ASUS | ROG Phone 7 ROG Phone 7 Ultimate | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | ※1 | |
Pixel 9 Pixel 9 Pro Pixel 9 Pro XL Pixel 9 Pro Fold | ○ | Google Tensor G4 | ○ | ||
Pixel 8 Pixel 8 Pro | ○ | Google Tensor G3 | ※1 | ||
HONOR | Magic 6 Pro | - | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | - | |
HONOR | Magic V2 | - | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | - | |
HONOR | Magic 5 Magic 5 Pro Magic 5 Ultimate | - | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | - | |
nubia | REDMAGIC 9S Pro | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ○ | |
nubia | REDMAGIC 9 Pro | 160MHz | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ○ |
OnePlus | 12R (US) | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | - | ||
OnePlus | 11 (US) | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | - | ||
Samsung | Galaxy S24 Ultra | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ※1 | |
SHARP | AQUOS R9 | ○ | Qualcomm Snapdragon 7+ Gen 3 | ○ | |
SONY | Xperia 1 VI | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ※2 | |
Xiaomi | POCO F6 Pro | - | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | ○ | |
Xiaomi | 14 Ultra (Global) | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | ○ | |
Xiaomi | 14 (Global) | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | - | |
Xiaomi | 13T Pro (Global) | ○ | MediaTek Dimensity 9200+ | ※1 | |
Xiaomi | 13 (Global) 13 Pro (Global) | ○ | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | - |
※1:日本向けモデルはWi-Fi 6E扱いで発売
※2:発売時点ではWi-Fi 6Eまでの対応、Wi-Fi 7は2024年秋以降のファームウェアアップデートで順次対応中
以下は中国市場へ投入された製品のうちWi-Fi 7への対応が確認できたものです。中国では6GHz帯における無線LANシステムの運用が認可されていないため、いずれも6GHz帯には(ハードウェアとして実装されたものをソフトウェア上で無効化、もしくは実装そのものを省略して)非対応となっています。
メーカー | 製品名 | 最大帯域幅 | SoC |
---|---|---|---|
OnePlus | 12 (CN) | 160MHz | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 |
OnePlus | Ace 3 (CN) | 160MHz | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 |
OnePlus | Ace 2 Pro (CN) | 160MHz | |
OPPO | Find X7 Ultra | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | |
OPPO | Find X7 | MediaTek Dimensity 9300 | |
OPPO | Find X6 Pro | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 | |
OPPO | Find X6 | MediaTek Dimensity 9200 | |
OPPO | Find N3 | 160MHz | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 |
OPPO | Find N3 Flip | 160MHz | MediaTek Dimensity 9200 |
realme | GT5 Pro | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 | |
realme | GT5 | Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2 |
Apple
iPhone 16シリーズ
2024年9月に発売されたiPhone 16シリーズはiPhone 16・iPhone 16 Plus・iPhone 16 Pro・iPhone 16 Pro Maxの全モデルが2ストリーム構成のWi-Fi 7に対応しています。ただし最大帯域幅が160MHz、変調方式が1024QAMに制限されているため、Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)相当の最大通信速度となる点に注意が必要です。
nubia
REDMAGIC 9 Pro
Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3を搭載し、最大22,000RPMの冷却ファンやショルダートリガーを内蔵したゲーミングスマートフォンです。日本国内でもWi-Fi 7もしくはWi-Fi 6E対応ルーター・アクセスポイントとの間で6GHz帯(最大160MHz幅)を用いた通信を行えます。
Samsung
Galaxy S24 Ultra
Galaxy S24 Ultra(ギャラクシーS24ウルトラ)のスペック | Samsung Japan 公式
前年のGalaxy S23 UltraがWi-Fi 6Eまでの対応に留まっていたのに対し、2024年のフラッグシップモデルであるGalaxy S24 UltraはGalaxyシリーズのスマートフォンとして初めてWi-Fi 7に対応しました。ただし日本向けモデルはドコモ版(SC-52E / SM-S928D)、au版(SCG26 / SM-S928J)、キャリアフリー版(SM-S928Q)のいずれもWi-Fi 6Eかつ160MHz幅での通信のみをサポートし、Wi-Fi 7には非対応です。
Wi-Fi
https://www.samsung.com/jp/smartphones/galaxy-s24-ultra/specs/
802.11a/b/g/n/ac/ax 2.4GHz+5GHz+6GHz, HE160, MIMO, 1024-QAM
SHARP
AQUOS R9
シャープ初のWi-Fi 7対応機種として2024年5月に発表されました。従来のAQUOS Rシリーズと異なりハイエンドモデルではないSoCのSnapdragon 7+ Gen 3を搭載するほか、刷新された筐体デザインが特徴です。ドコモでの取扱に伴って無線LANの詳細仕様が公開され、Wi-Fi 7対応アクセスポイントとの組み合わせにより6GHz帯において最大5,764Mbpsの通信を行えることが明示されています。
スペックとサービス・機能 | AQUOS R9 SH-51E | Android スマートフォン | 製品 | NTTドコモ
Xiaomi
XiaomiのWi-Fi 7対応スマートフォン(中国市場向け製品を除く)は2024年5月現在、Xiaomi 14 UltraやPOCO F6 Proなどが存在します。
POCO F6 Pro
2022年発売のPOCO F4 GT以来、約2年ぶりのPOCOシリーズとして2024年5月に発売された製品です。6GHz帯非対応のデュアルバンド構成ではあるもののWi-Fi 7に対応し、Qualcomm Snapdragon 8 Gen 2を搭載しながら12GB+256GBモデルが69,980円(税込)と現行ハイエンド機種に比べて安価に入手できるのが特徴です。
Wi-Fi 7非対応のスマートフォン
2024年5月現在、Wi-Fi 7に対応する製品の数は限られており、上に挙げたものを除く大半の製品はWi-Fi 7に対応していません。
iPhoneは比較的早い段階(2019年発売のiPhone 11シリーズ)でWi-Fi 6に対応しましたが、2024年発売のiPhone 15シリーズまでの全モデルがWi-Fi 7非対応です。また、iPadおよびMacにもWi-Fi 7対応モデルは2024年2月時点で存在しません。
Galaxyは2024年に登場したGalaxy S24シリーズのうち最上位モデルのGalaxy S24 UltraのみがWi-Fi 7対応で、Galaxy S24/S24+および2023年以前のモデルはWi-Fi 7非対応です。また、Galaxy S24 Ultraでも国内市場向けモデルはWi-Fi 7対応を謳わず、Wi-Fi 6E対応の扱いとなっています。
スマートフォン向けWi-Fi 7チップセット
Qualcomm FastConnect 7800
Qualcommが2023年に発表したWi-Fi 7対応プラットフォームです。6GHz帯で連続した320MHz幅を用いる最大5.8Gbpsの通信に加え、6GHz帯と5GHz帯でそれぞれ160MHz幅を用いる最大5.8Gbps、もしくは6GHz帯を利用できない地域を想定し5GHz帯で240MHz幅を用いる最大4.3Gbpsの通信に対応可能となっています。
Snapdragon 8 Gen 3やSnapdragon 8 Gen 2を搭載するスマートフォンで採用されているほか、Qualcomm QCNCM865・Fibocom WN170-GL・OFLYCOMM O7851Pのようにモジュール化されWi-Fi 7対応PC・マザーボード・拡張カードに組み込まれている場合もあります。
Broadcom BCM4398
Wi-Fi 7 and dual-core Bluetooth combo chipset BCM4398
Broadcomが2022年に発表したWi-Fi/Bluetoothコンボチップセットです。Google Pixel 8 ProはWi-Fi 7対応のためにBCM4398を搭載していることが確認されています。
翌2023年には最大帯域幅が160MHzの下位モデルとしてBCM4390が発表されました。
MediaTek Dimensityシリーズ
MediaTek | MediaTek Dimensity 9300
MediaTekの5Gスマートフォン用SoC「Dimensity」シリーズのうち、フラッグシップ向けと位置付けられるDimensity 9200以降の製品(9200/9200+/9300/9300+)はWi-Fi 7への対応が可能となっています。対応例としてはDimensity 9300を搭載したOPPO Find X7(中国市場向けモデルは6GHz帯非対応)等が存在します。