Synology、Wi-Fi 6対応VPNルーター「RT6600ax」を発表 3年ぶりのモデルチェンジ


Synologyは2021年12月3日、オンラインイベント「Synology 2022 AND BEYOND」内で無線LANルーター「RT6600ax」および同社製ルーター向けOS「Synology Router Manager (SRM) 1.3」を発表しました。

イノベーションに終わりはない - Synology 2022 AND BEYOND | Synology Inc.

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※2022/03/21追記:総務省ウェブサイトの「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」上でRT6600axが2022年1月19日付で工事設計認証を通過したことが公開されました。これに伴い記事の内容を一部更新しています。

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RT6600axの概要

RT6600axの製品ページなどは2021年12月3日時点で公開されておらず、明らかになっている情報は非常に限られています。リリースや「CONNECT — Synology 2022 AND BEYOND」から読み取れれるRT6600axの概要は以下の通りです。

3年ぶりのフルモデルチェンジ

Synology製の無線LANルーターは「RT1900ac」(国内未発売)、「RT2600ac」を経て2018年10月に発表された「MR2200ac」を最後に後継品の投入がストップしており、RT6600axはおよそ3年ぶりに投入された新製品です。

過去モデルとの違い

RT6600axRT2600acMR2200ac
クラス / バンド
対応規格
AX6600 / トライバンド
IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n
AC2600 / デュアルバンド
IEEE 802.11ac/a/b/g/n
AC2200 / トライバンド
IEEE 802.11ac/a/b/g/n
最大通信速度
(5GHz帯1)
詳細未公開
(4,804Mbps/4str/160MHz?)
1,733Mbps
(4str/80MHz)
867Mbps
(2str/80MHz)
最大通信速度
(5GHz帯2)
詳細未公開
(1,201Mbps/2str/80MHz?)
非対応867Mbps
(2str/80MHz)
最大通信速度
(2.4GHz帯)
詳細未公開
(574Mbps/2str/40MHz?)
800Mbps
(4str/40MHz/256QAM)
400Mbps
(2str/40MHz/256QAM)
WAN端子1000BASE-T×11000BASE-T×11000BASE-T×1
LAN端子2.5GBASE-T×1 ※1
1000BASE-T×3
1000BASE-T×4 ※21000BASE-T×1
USB端子USB 3.0 Standard-A×1USB 3.0 Standard-A×1
USB 2.0 Standard-A×1
USB 3.0 Standard-A×1
CPUQualcomm IPQ6018
Arm Cortex-A53 4コア 1.8GHz
(認証情報ベース)
Qualcomm IPQ8065
Qualcomm Krait 300 2コア 1.7GHz
Qualcomm IPQ4019
Arm Cortex-A7 4コア 717MHz
RAM未公開DDR3 512MBDDR3 256MB

※1:WAN端子としても利用可能

※2:内1基はデュアルWAN対応

デザイン

RT6600axはRT2600acに近いデザインで黒い筐体の背面および両側面に合計6基の外部アンテナ(RT2600acは4基)、天面の前方に動作状態を表すLEDを備え、天面にはSynologyのロゴが入っています。アンテナはRT2600acのものとやや形状が異なります。

IEEE 802.11axのサポート

従来のSynology製ルーターはIEEE 802.11ac(Wi-Fi 5)までのサポートに留まっていましたが、RT6600axでは同社製ルーターとして初めてIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)がサポートされました。

トライバンドの「AX6600」クラスとされていますが「Wi-Fi 6E」の記述は見られないため、6GHz帯には対応せず5GHz帯 + 5GHz帯 + 2.4GHz帯の構成を採っていると思われます。5GHz帯の一方は4ストリームかつ4,400Mbps(公称値)の通信が可能とされており、最大4,804Mbps(5GHz帯1 4ストリーム/160MHz) + 1,201Mbps(5GHz帯2 2ストリーム/80MHz) + 574Mbps(2.4GHz帯 2ストリーム/40MHz)のような組み合わせが考えられます。

※2022/03/21追記:工事設計認証の添付資料からQualcomm IPQ6018 + QCN9024の搭載が確認できるため、5GHz帯1でQCN9024、5GHz帯2および2.4GHz帯でIPQ6018を用いて上記の組み合わせを採っている可能性が高いと思われます。(IPQ6018については後述)

また、日本国内で発売された際には利用できないものの、アメリカで無線LANシステム向けに一部開放された5.9GHz帯の拡張部分である169/173/177/181chに対応しており、利用可能なチャンネルが20MHz幅で4つ、40MHz幅で2つ、80MHz幅・160MHz幅で各1つ拡大します。

FCC Modernizes 5.9 GHz Band to Improve Wi-Fi and Automotive Safety | Federal Communications Commission

Wi-Biz通信Vol.52 米国でDSRCが終了、5.9GHz帯の半分以上がWi-Fi化(一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会)

2.5GBASE-Tのサポート

RT6600axは背面に1基の2.5GBASE-T対応端子(『WAN2/LAN1』)と4基の1000BASE-T対応端子(『WAN1』および『LAN2~4』)を備えており、WAN側もしくはLAN側に2.5GBASE-T対応機器を接続できます。2.5GBASE-TもSynology製ルーターでは初の対応で、他のSynology製品ではPCI Express接続のNIC「E10G18-T1」が2.5GBASE-T(および10GBASE-T/5GBASE-T)をサポートしています。

※2021/12/03追記:初出時にポート構成が誤った表記となっていたため修正しました。上記画像における青いポートが1000BASE-T対応の「WAN1」、黄色いポートの左端が2.5GBASE-Tに対応する「WAN2/LAN1」です。

USB端子はRT2600ac・MR2200acと同じくUSB 3.0 Standard-A×1であり、USB Type-C端子による上位規格(USB 3.2 Gen 2・USB 3.2 Gen 2x2など)への対応は行われていません。用途は明言されていませんが、従来製品と同様に接続したプリンタやストレージをネットワーク内で共有できると思われます。

メッシュネットワーク

従来製品に引き続き複数台のルーターによるメッシュネットワークの構築が可能ですが、「CONNECT — Synology 2022 AND BEYOND」内(17分10秒~20秒台・画面左下の注釈)に「Initially only between other RT6600ax」との表記が見られ、少なくとも投入時点では従来製品との混在に対応せず、複数台のRT6600axでの構築のみをサポートするようです。

プロセッサ

本項の内容は各機関から公開されている認証情報に基づきます。実際の製品とは異なる可能性があります。

工事設計認証の通過時に公開された内部画像から、RT6600axにはQualcomm IPQ6018が搭載されていることが確認できます。同社製品を取り扱う株式会社マクニカ、IPQ6018搭載ボード「WPQ618」を投入しているCompexなどから公開されている資料を確認すると、IPQ6018は4コア 1.8GHzのCPU(Arm Cortex-A53)を備え2ストリーム/80MHz + 2ストリーム/40MHzの無線LANインターフェイス(『AX1800』クラス相当)が統合された製品であるようです。

Qualcomm 11ax: Networking Pro シリーズ - Qualcomm - マクニカ

WPQ618 | Compex Systems: Leader in OEM/ODM Wireless Integration

RT2600acは2コア 1.7GHzのCPU(Qualcomm Krait 300)を含むQualcomm IPQ8065、MR2200acはIEEE 802.11ac世代のメッシュネットワーク製品で多く見られた4コア 717MHzのCPU(Arm Cortex-A7)を含むQualcomm IPQ4019を搭載していたため、RT6600axでは無線LANの速度に加えてCPUのパフォーマンスについても従来製品からの向上が見込まれます。

SRM 1.3

RT6600axに標準搭載されるSRM 1.3では1台のルーターが最大5つのSSIDを展開できるようになり、SSID単位でのネットワーク分離やWPSの有効・無効化が可能になっています。また、カスタマイズ可能なペアレンタルコントロール機能「Safe Access」、2021年より恒久的に無償化されたVPNサーバー機能「VPN Plus」も引き続き利用できます。

RT2600ac・MR2200ac向けのSRM 1.3は2022年に提供開始予定とされています。

RT6600axの価格・発売時期

RT6600axは2022年上半期に発売される予定です。国内外での価格や国内での発売時期は2022年3月現在明らかになっていませんが、工事設計認証を通過したことからRT2600ac・MR2200acと同様に国内での発売が予定されているものと思われます。

なお、2022年4月末にはイギリス向けのAmazon.co.ukにRT6600axの価格が一時掲載されていました。外部サービス「Keepa」の履歴から確認できるAmazon.co.uk掲載時の価格は273.13GBP(約44,600円)です。