ミニPCやノートPCに搭載されている消費電力の低いIntel製CPUの仕様や性能を一覧でまとめています。AMD製CPUに関する情報は「ミニPC向けAMD製CPUの性能・仕様まとめ」をご覧下さい。
一覧表
製品型番のリンクはIntel ARKに遷移します。PassMark・Geekbench 6(Multi-Core)のスコアは2024年1月時点で確認できたものであり、最新の値とは異なる場合があります。
製品の概要
Alder Lake-N
Intel Processor N100
"Alder Lake-N"世代のIntel Processor Nシリーズとして2023年に投入されたプロセッサです。従来の同コンセプト品には「Celeron」や「Pentium」のブランドが付与されていたのに対し、"Alder Lake-N"世代の下位製品はこれらのブランド名を省いた「Intel Processor」に統合されました。
デスクトップ向け第13世代Coreシリーズ("Raptor Lake-S")・第12世代Coreシリーズ("Alder Lake-S")のE-Coreと同じ"Gracemont"ベースのCPUコアを4基搭載し、高性能・高消費電力のP-Coreこそ持たないものの、従来のN型番製品からのパフォーマンス向上が謳われています。
同じく4コアCPU・TDP 6W・PL2 25Wの上位モデルとしてIntel Processor N200が存在し、CPU最大クロック周波数(3.40GHz→3.70GHz)とGPU EU数(24→32)が主な相違点です。
Intel N100搭載のミニPC
Intel N100を搭載したミニPCは多数の製品が登場しており、2基の2.5GBASE-T対応端子(Intel I225-V)を備えるBeelink EQ12 Pro、12GBのLPDDR5 RAMを搭載したCHUWI LarkBox X 2023などが容易に入手可能です。
Intel N100搭載マザーボード
N100をオンボードで搭載するマザーボードとしてはASRockの「N100M」・「N100DC-ITX」、ASUSの「PRIME N100I-D D4 / PRIME N100I-D D4 CSM」などが発表されています。
この内N100DC-ITXは2023年6月より国内での販売が開始されており、2024年1月時点においても国内の正規販路で流通している唯一のIntel N100搭載マザーボードです。
既製品やベアボーンキットとしての販売が多いミニPCに対して任意のケースに組み込めるメリットがあるものの、モバイル向けかつ内蔵PCHの規模も限られたAlder Lake-Nベースのため、一般的なマザーボードに比べてPCI ExpressやSATAなどのインターフェイスが乏しい点に注意が必要です。
N100M | N100DC-ITX | PRIME N100I-D D4 | |
---|---|---|---|
メーカー | ASRock | ASRock | ASUS |
フォームファクタ | Micro-ATX | Mini-ITX | Mini-ITX |
CPUクーラー | ヒートシンク搭載 交換非対応 | ヒートシンク搭載 交換非対応 | ヒートシンク搭載 交換非対応 |
メモリ | DDR4-3200 DIMM×1 最大32GB | DDR4-3200 DIMM×1 最大32GB | DDR4-3200 SODIMM×1 最大32GB |
PCIeスロット | PCIe 3.0 x2(x16形状)×1 PCIe 3.0 x1×1 | PCIe 3.0 x2(x4形状)×1 | PCIe 3.0 x1×1 |
M.2スロット | M.2 2280×1(PCIe 3.0 x2) M.2 2230 Key E×1(CNVioモジュール専用) | M.2 2280×1(PCIe 3.0 x2) M.2 2230 Key E×1(CNVioモジュール専用) | M.2 2280×1(PCIe 3.0 x2) M.2 2230 Key E×1(CNVio/PCIe) |
SATA端子 | 2基 | 2基 | 1基 |
映像出力端子 | HDMI/DisplayPort/D-Sub | HDMI/D-Sub | HDMI/DisplayPort/D-Sub |
有線LAN | 1000BASE-T×1 (Realtek RTL8111H) | 1000BASE-T×1 (Realtek RTL8111H) | 1000BASE-T×1 (Realtek) |
無線LAN | スロットのみ | スロットのみ | スロットのみ |
電源供給 | ATX電源 | 19V DC電源アダプタ(別売) | ATX電源 |
国内価格 | N/A | 税込22,800円前後 | N/A |
Core i3-N305
Intel Processor Nシリーズと同じく"Alder Lake-N"に属する"Gracemont"アーキテクチャのCPUですが、8コア構成のモデルは「Core」ブランドを冠します。E-Core相当とはいえ物理8コアで構成されるためか、PassMark PerformanceTestでは"Kaby Lake"世代のデスクトップ向けCPUであるCore i7-7700K(4C/8T TDP 95W)に匹敵するスコアを記録しています。
2023年5月現在、Beelink EQ12 ProやMINISFORUM Venus UN305が登場している他、GIGABYTEが「BRIX」シリーズの小型ベアボーンキットとしてCore i3-N305搭載のGB-BNi3-N305を公開しています。
GB-BNi3-N305 (rev. 1.0) Key Features | BRIX (Mini-PC Barebone) - GIGABYTE Global
下位モデルとして存在するCore i3-N300のコア数やGPU EU数はCore i3-N305と等しく、TDPが15Wから7Wに、PL2が35Wから25Wに引き下げられていることが主な相違点です。
Core i3-N305搭載マザーボード
搭載マザーボードが一般向け販路でもわずかながら流通しているIntel Processor N100に対して、Core i3-N305をオンボードで搭載した製品はAAEON Up Squared Pro 7000、ASUS N305S-IM-AA、Advantech MIO-2364といった産業用途のSBC(Single Board Computer)が大半を占めています。
AliExpress等で流通しているあまり一般的ではない製品として、マザーボードにCore i3-N305やN100を実装した上で銅製のヒートスプレッダを取り付け、一般的なCPUクーラーとの互換性を持たせたものが存在します。"CW-ADLN-NAS"の刻印がある下記リンク先のモデルはJMicron JMB585経由でSATA端子を6基確保し、更にPCIe x1接続のM.2 SSDを2基搭載可能であるとのことです。
Alder Lake
Core i7-12650H
E-Coreのみで構成される"Alder Lake-N"に対し、型番末尾がHX/H/P/UのノートPC・ミニPC向け"Alder Lake"プロセッサにはデスクトップ向けの"Alder Lake"や"Raptor Lake"同様、グレードによってコア数が異なるもののP-CoreとE-Coreの両方が備わっています。
Core i7-12650Hは6基のP-Coreと4基のE-Coreで構成される合計16スレッドのモデルで、搭載製品としてはMINISFORUMからビジネス向けのVenus Series NAB6、さらにdGPU(単体GPU)としてIntel Arc A730Mを搭載しグラフィック・ゲーミング性能の向上を図ったHN2673が登場しています。
Jasper Lake
Pentium Silver N6005
2021年に投入された"Jasper Lake"世代の最上位モデルでTDPは10W、"Tremont"アーキテクチャに基づく4コアのCPUは最大3.30GHzで動作します。
搭載製品としてはGMKtec NucBox 7などが流通している他、本製品を含む"Jasper Lake"世代のCPUを搭載したIntel純正のベアボーンキットとしてNUC 11 Essential Kit("Atlas Canyon")も存在します。
Gemini Lake Refresh
Celeron J4125
"Gemini Lake Refresh"世代の製品として2019年に投入されました。CPUの最大周波数は2.70GHz、GPUのEU数は12基となっており、後発製品に比べてスペックが見劣りすることは否めません。
デスクトップ・ノート・スティックの各フォームファクタで多数の搭載製品が発売され、ASRock J4125-ITXやBIOSTAR J4125NHUなどファンレス稼働用ヒートシンクと合わせてMini-ITXマザーボードに実装されたものも登場しました。
Elkhart Lake
Celeron J6412
組み込み向け製品として2021年に投入された"Elkhart Lake"を構成するモデルの一つです。パフォーマンスは概ね"Jasper Lake"世代の類似仕様モデルに相当します。
ミニPCにおける採用例は限られているものの、複数のEthernet端子を備えるファンレス筐体の製品がわずかながら流通しており、OpenWrtやOPNsenseなどを導入することでルーター/ファイアウォールとして利用可能です。また、QNAPからはCeleron J6412を搭載したTS-x53EシリーズのNASが登場しています。
Ice Lake
Core i3-1000NG4
2020年投入とされている"Ice Lake"世代のモバイル向けプロセッサです。Intel CPU時代のMacbook向けに供給されていたようですが、2023年にBMAXから本製品を搭載したミニPC「B6 Plus」が発売されています。
Whiskey Lake
Core i3-8145U
"Whiskey Lake"世代のモバイル向け製品として2018年に投入されました。やや古めの製品ではあるものの、Windows 11のサポート対象に含まれています。
本来のターゲットであるノートPCへの搭載例が多くミニPCにおける採用は限定的ですが、筐体天面全体をヒートシンクとしたファンレス構造のSkynew S3などが流通しています。