「Linksys」ブランドのメッシュWi-Fiシステム「VELOP」(トライバンドモデル・WHW03)を入手したので仕様や機能を見てみたいと思います。
(本商品はベルキン株式会社より提供を受けています)
仕様
VELOP WHW03(3パック・WHW0303-JP)は2018年に国内で発売されたメッシュネットワーク製品で、5GHz帯 x 2波でIEEE 802.11acによる最大867Mbpsの、2.4GHz帯でIEEE 802.11nによる最大400Mbpsの通信に対応する「AC2200」クラスの機器です。
トライバンドの内1波をメッシュネットワーク構築のバックホール専用に割り当てる他社製品と異なり、3つの帯域すべてを子機との接続に用いることができるとされています。
MU-MIMOやビームフォーミングにも対応し、ノードごとに1000BASE-T対応のWAN・LAN端子を2基備えています。
外観・同梱品
他社のメッシュネットワーク製品にも言える点ですが、筐体は白く外部にアンテナ類が露出しておらず、状態を示すLED等も最小限という、Linksysブランドのルーター製品群と比べると非常にシンプルなデザインです。
トライバンドモデルであるWHW03はデュアルバンドモデル(WHW01)に比べて筐体が高くなっています。
底面を除く5面のうち、側部2面はザラリとした手触りで1箇所に「Linksys」ロゴがあり、他の側部2面と天面には排気・換気を目的とした多数の穴が空いています。
底面は上げ底になっており、電源ケーブル・LANケーブルを切れ目から引き込める構造です。
底面には電源端子とLAN端子(2基・1000BASE-T対応)のほか、リセットボタンと電源スイッチ、シリアル番号などが表記されたラベルがあります。
VELOPは全ノードが等しい機能を持つタイプのメッシュネットワーク製品なので、3ノードともデザインに差はありません。
今回入手したWHW0303-JPの場合、同梱品はLANケーブル、ACアダプタ(3基)、セットアップガイド(Linksysアプリのダウンロード案内)です。
ACアダプタがやや大きめなので、コンセントや電源タップの空きスペースが少ない場合は延長ケーブルなどの利用を検討することをお勧めします。
セットアップ
セットアップはAndroid/iOS向けの「Linksys」アプリから行うことになります。
(セットアップ完了後の設定はPC等のブラウザからも可能です)
アプリ起動後に画面の表示内容に従って操作を進めることで、最初の1ノードのセットアップが完了します。
最初のノードを含む各VELOPノードには名前を付けて管理できます。
プリセットには「ダイニングルーム」「ベッドルーム」などが用意されていますが、プリセットにないものを手動で入力することも可能です。
ブリッジモードへの切替
通常の手順でセットアップを行うとVELOPはルーターとして稼働しますが、既にルーターがある場合は「Linksys」アプリから設定の変更を行うことでブリッジモードへの切替が可能です。
「Linksys」アプリの画面左上に表示されるメニューアイコンをタップして「詳細設定」→「インターネット設定」へ進み、「接続の種類」で「ブリッジモード」を選択することでブリッジモードで動作するようになります。
NTTのひかり電話ルーターが稼働している環境で行った今回のセットアップ完了後、VELOPのSSIDに接続したAndroidスマートフォン(Galaxy S9)にてネットワークへの接続が不安定な旨が表示されましたが、ブリッジモードへの変更を行うことで表示されない状態となりました。
ノードの追加
新規ノードの追加も「Linksys」アプリのメニューアイコン→「新製品をセットアップ」から行えます。
通信品質
電波の強さ
既存の無線LANアクセスポイントと同じ場所に最初のノードを設置し、最初のノードと安定して接続できる場所に他のノードを設置する形態でテストを行いましたが、2.4GHz帯/5GHz帯両対応の子機では従来2.4GHz帯に切り替わっていた部屋でも5GHz帯(IEEE 802.11ac)での接続が可能になりました。
2.4GHz帯のみ対応の子機でも適切なノードへの切り替えによって比較的通信が安定するようになった印象です。
I-O DATAのアプリ「Wi-Fiミレル」で品質測定を行ったところ、既存のアクセスポイントが2.4GHz帯でカバーできなかった範囲(特に1Fの広範囲)が問題なくカバーできるようになりました。
通信速度
上記の通り5GHz帯での接続が可能になった場所では、従来20~30Mbps程度だった通信速度が130Mbps前後まで向上しました。
付加機能
VELOPにはペアレンタルコントロールやデバイス単位のQoS制御、ゲスト用SSIDやスピードテストといった付加機能が実装されています。
今回はブリッジモードで運用したためゲスト用SSIDのみを確認しましたが、アプリの初期画面からオン・オフを簡単に切り替えることができました。
気になった点
無線LANの設定はSSID、事前共有キー、暗号化方式(WPA2のみ、WPA/WPA2 Mixed、暗号化なし)、使用する規格といった点が任意で設定可能ですが、それ以外の設定は基本的にユーザーが変更できないようになっています。
チャンネルもトライバンドの各帯域をどのように使うかはVELOPに委ねられており、アプリの「チャネルファインダー」機能で現在VELOPが使用しているチャンネルの確認、および適切なチャンネルの自動選択ができる程度です。
また、その他の設定についても多くがユーザーからの操作をあまり想定していないような造りで、ネットワーク環境を詳細に設定したい場合には物足りなさを感じるかと思われます。
総評
アプリの指示に従ってノードを設置するだけで簡単にネットワークが構築できる点は非常に便利だと感じました。
通信速度やクライアント接続時の安定性についても、適切にノードを設置すればおおよその環境で十分なものが確保できると思われます。
ただし、導入にあたって最大のネックになるのは他社のメッシュネットワーク製品としても高価な部類に入る価格であり、予算さえ確保できていれば有力な選択肢になるでしょう。
細かい部分まで触る必要がなくWi-Fiに関する設置場所や設定などの悩みを減らしたい、または「これまでAirMacシリーズを利用しており、AirMacの終了に際して移行しようとしても他社製品のデザインが気に入らない」といった方にはお勧めできる製品ではないかと思います。