2024年8月21日現在、総務省ウェブサイトの「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」において、Sercomm Corporationの「EVO310G」が2024/07/31付で工事設計認証を通過したことが公開されています。EVO310Gは特定無線設備の種別や電波の型式に加えて認証時の資料が公開されているため、これらの公開情報から多くの事項を読み取ることができます。
総務省 電波利用ホームページ | 技術基準適合証明等を受けた機器の検索(『EVO310G』の検索結果)
外観・端子構成・投入先
添付資料のうち「020-240220_01_002.pdf」には筐体外部・内部・ACアダプタの画像が含まれており、「SoftBank」ロゴが入った白い筐体、「インターネット回線」・「10G LAN」・「LAN1」~「LAN3」・「電話機」・「電話回線(モジュラージャック)」・「USB」・「保守用」・「電源」の日本語ラベルが付けられ色分けされた端子類が確認できます。RJ-45端子のうち「インターネット回線」・「10G LAN」の2基は金属製であり、この2基が10GbE(10GBASE-T)対応と思われます。
また、ラベルには型番としてEVO310Gのほか、「10G E-WMTA1.0」の表記が入っています。
これらの外観的特徴および「E-WMTA」の名称はソフトバンクが光コラボレーションモデルの「SoftBank 光」、およびISPサービスの「Yahoo! BB 光 with フレッツ」加入者向けに提供している宅内機器「光BBユニット」と一致していることから、EVO310Gも10GbE対応を果たした光BBユニットの新モデルの可能性が高いと推測されます。
「フレッツ 光クロス」相当の上下最大概ね10Gbps通信を行える「SoftBank 光・10ギガ」では光BBユニットを無線LANアクセスポイントとして利用する「Wi-Fiマルチパック」が2024年8月現在提供されておらず、卸元のNTT東日本・NTT西日本が提供するXG-100NE(ソフトバンク側の呼称は『ホームゲートウェイ(N)10ギガ』)経由で無線LAN通信を行う形態となっていますが、EVO310Gが光BBユニットとして投入された場合は「光・10ギガ」でも光BBユニットをアクセスポイントとして利用可能になることが見込まれます。
無線インターフェイス
10GbEへの対応のほか、現行の光BBユニットから大きく変更されているのが無線LAN部分です。
EVO310Gは証明規則第2条第19号・第19号の3・第80号で工事設計認証を受けており、2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯(LPIモード)に対応する無線設備であることが確認できます。
さらに添付資料を参照すると6GHz帯ではWi-Fi 7(IEEE 802.11be)を用いた最大4ストリーム/320MHz幅、5GHz帯では最大4ストリーム/160MHz幅、2.4GHz帯では最大4ストリーム/40MHz幅の通信が可能とされており、制限が設けられていなければ通信速度は6GHz帯で最大11,529Mbps、5GHz帯で最大5,764Mbps、2.4GHz帯で最大1,376Mbpsのトライバンド「BE19000」構成となります。
ハードウェア仕様
「020-240220_01_002.pdf」には筐体の外観のみならず内部の画像も含まれており、どのようなハードウェアで構成されているかをある程度判断可能です。
プロセッサはBroadcomが2022年に発表したBCM4916が用いられています。Arm "B53" 4コア 2.6GHzのCPUのほか、1基分の10GbE PHYと4基分のGbE PHYが含まれており、「10G LAN」・「LAN1」~「LAN3」の計4基がBCM4916へ接続されている様子が見て取れます。また、10GBASE-T PHYのBCM84891Lと思われるチップが存在し、こちらは「インターネット回線」端子へ接続されています。
RAMはMicronの"D8BPK"=MT40A512M16TB-062E:R(DDR4 8Gbit)を2基、合計2GB分搭載しています。
無線LANインターフェイスはBroadcomがBCM4916と同時に発表したBCM6726を2.4GHz帯・5GHz帯向けに合計2基、BCM67263を6GHz帯向けに1基搭載しています。2.4GHz帯と5GHz帯はアンテナを共有し、6GHz帯のみ専用のアンテナを確保する形です。