
Broadcom Inc.は2025年10月14日、無線LANチップセット「BCM6718」・「BCM43840」・「BCM43820」・「BCM43109」を発表しました。すでに一部パートナーに対してサンプルの提供が開始されているとのことです。
Wi-Fi 8: Ultra Reliable, Low Latency, AI Ready
今回発表された4製品はいずれも「Wi-Fi 8」との命名が見込まれるIEEE 802.11be(UHR:Ultra High Reliability)に準拠しており、Broadcom製品では初の、他社を含めても具体的な製品情報が公表されたものとしては世界初のWi-Fi 8対応チップセットとなります。
BCM6718はWi-Fi 7(IEEE 802.11be)世代におけるBCM6723/BCM67263や、Wi-Fi 6/6E(IEEE 802.11ax)世代におけるBCM6715/BCM43984に相当する4ストリーム構成の無線インターフェースで、SoCにPCI Express 3.0で接続してWi-Fi 8対応アクセスポイントを構築可能です。6GHz/5GHz/2.4GHzのトライバンド対応ですが一度に運用できるのは1つの周波数帯のみのため、トライバンド構成のアクセスポイントを構築する場合は3基のBCM6718を接続する必要があり、この点も従来製品と類似しています。Wi-Fi 8には最大通信速度を引き上げる変更は盛り込まれていないため、通信速度はBCM67263と同じく最大11.5Gbps(6GHz帯/320MHz幅の場合)です。
BCM43840は4ストリーム構成、BCM43820は2ストリーム構成の無線インターフェースです。どちらもエンタープライズグレードのWi-Fi 8アクセスポイントでの使用が想定された製品であり、-40℃から85℃の広い動作温度範囲に対応するのが特徴です。
BCM43109はWi-Fi 8に加えてBluetooth 6.0やIEEE 802.15.4をサポートし、モバイル機器への組み込みに適した無線LAN/Bluetoothコンボチップセットです。MLO(Multi-Link Operation)は異なる周波数帯のリンクで同時に送受信を行うSTR(Simultaneous Transmit and Receive)と、複数の周波数帯でリンクし実際に通信する周波数帯を切り替えるeMLSR(Enhanced Multi-Link Single-Radio)の両方をサポートすることが明示されています。

2022年にWi-Fi 7チップセットが初めて発表された際にはアクセスポイント向けSoCのBCM4916/BCM49428も同時に発表されていましたが、今回は無線インターフェースのみでSoCは発表されていません。BCM6718のProduct BriefにはBCM6718をBCM4916に接続したブロックダイアグラムが掲載されており、少なくとも個人向けアクセスポイントのSoCはしばらくの間BCM4916が最上位モデルのままになると思われます。