アンテナが自動で動くルーター「Archer AXE200 Omni」の話題(2023年7月)

TP-Linkの無線LANルーター「Archer AXE200 Omni」が2023年6月に米FCCの認証を通過していました。認証時の添付資料から読み取れる事柄、公式サイトの現状などを書き連ねてみたいと思います。

FCC ID 2AXJ4AXE200OMNI

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Archer AXE200 Omniとは

Archer AXE200 Omniの初出は本稿執筆時からおよそ1年半前、2021年11月まで遡ります。CES 2022 Innovation Awardsの対象製品として選出され、従来のTP-Link製品とは一線を画すデザインのIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6E)対応ルーターであることが明らかになりました。

その後2022年1月に開催されたCES 2022に合わせて正式発表が行われ、ルーターから制御を行える可動式アンテナを4基搭載していることが公表されます。CES 2022関連リリースから判断する限り、この時点では2022年内の発売が予定されていたようです。

しかしCES 2022の閉幕後、Archer AXE200 Omniに関する動きは2022年9月のIFA 2022への出典程度に留まり、2022年内に発売されることはありませんでした。同じくCES 2022で発表されたArcher AXE300は公約通り年内に登場し、さらに2022年11月には最新規格のIEEE 802.11be(Wi-Fi 7)に対応する製品群が発表され、2023年に入ってから一部地域で販売が開始されています。

2022年1月の正式発表から2023年7月現在まで発売に至っていないArcher AXE200 Omniですが、直近でいくつかの動きが確認できます。

可動式アンテナ

Archer AXE200 Omniの最大の特徴は筐体の四隅に設置されたモーター可動式アンテナMotorized Antennaです。動作する様子は展示品や製品ページの動画などから判明していたものの、FCC認証通過時に提出されたマニュアルの公開によって実際に利用可能な機能が明らかになりました。

マニュアル上では特定のクライアントを指定して指向性を高めると思われる「Device Boost」、特定のエリアを指定する「Area Boost」、家の構造に応じて最適化を行う「Layout Boost」、利用状況に応じた最適化を企図したものと見られる「AI Boost」の存在が確認できます。

内部構成

認証資料の内部画像からはプロセッサとしてBroadcom BCM4912(Arm B53 4コア 2.0GHz)、無線LANインターフェイスとしてBroadcom BCM6715を搭載していることが確認できます。RAMはSamsung K4A4G165WE-BCRC×2(=1GB)です。BCM4912+BCM6715の構成はASUSが2021~2022年頃に投入した上位モデルで見られたもので、Archer AXE200 Omniの開発時期を伺わせます。

また、アンテナ関連の基板はメインの基板から独立しており、アンテナを動作させるためのものと思われるRuimeng Technology MS41949、およびArm Cortex-M4ベースのMCUであるGigaDevice GD32F330RBT6が実装されています。

公式サイトの情報

FCC認証通過と近しいタイミングでTP-Linkのシンガポール向けサイトでArcher AXE200 Omniの製品ページが公開され、更にセキュリティサポートを2026年9月まで行う旨が掲載されました。製品ページでは外観・概要に留まらず特徴や仕様も公開されており、すでに販売されている他の製品に相当するページ構成となっています。

Archer AXE200 Omni | AXE11000 Tri-Band Wi-Fi 6E Motor Router | TP-Link Singapore

Duration of Security Support | TP-Link Singapore

発売の有無

TP-Link製品には発表されながら発売されなかったもの(2019年のDeco X10(旧)2021年のArcher AX206等)や発表後に名称・仕様が変更されたもの(Archer AX96→Archer AXE95、RE900XD(筐体デザイン変更)等)がありますが、FCCの認証を通過した製品が実際に発売されなかった、もしくは認証通過時から大幅に仕様が変更された例はほとんど確認できません。また、一部地域のみとはいえ公式サイト上の情報が更新されたことを踏まえても、予定より大幅な遅れを伴いながらもArcher AXE200 Omniが実際に投入される可能性は上がったと考えられます。