PCで利用可能なWi-Fi 7(IEEE 802.11be)対応モジュールの概要、AMD環境で利用する際に注意すべき事項などをまとめています。
Intel
2024年5月現在、IntelからはWi-Fi 7モジュールとして「Intel Wi-Fi 7 BE200」("Gale Peak 2")と「Intel Wi-Fi 7 BE202」("Misty Peak 2")の2製品が投入されています。
Intel WiFi 7 BE200 Product Specifications
Intel WiFi 7 BE202 Product Specifications
BE200とBE202の大きな違いは最大通信速度です。BE200は6GHz帯で空間ストリーム数を2、占有帯域幅を320MHz、変調方式を4096QAMとした最大5.8Gbpsの通信を行えますが、BE202は帯域幅と変調方式がそれぞれ160MHz/1024QAMに制限されており、通信速度はWi-Fi 6世代のAX20x/AX21x/AX411シリーズと同じ最大2.4Gbpsとなります。
通信速度以外の仕様はほぼ共通で、それぞれにM.2 2230サイズであることを表すサフィックス「NGW」、M.2 1216を表す「D2W」が用意されています。
BE200 | BE202 | |||
---|---|---|---|---|
BE200NGW | BE200D2W | BE202NGW | BE202D2W | |
最大通信速度 (6GHz帯) | 5.8Gbps | 5.8Gbps | 2.4Gbps | 2.4Gbps |
フォームファクタ | M.2 2230 | M.2 1216 | M.2 2230 | M.2 1216 |
インターフェイス | PCI Express (Wi-Fi) USB (Bluetooth) | PCI Express (Wi-Fi) USB (Bluetooth) | PCI Express (Wi-Fi) USB (Bluetooth) | PCI Express (Wi-Fi) USB (Bluetooth) |
AMD環境における注意事項
Intel Wi-Fi 7 BE200/BE202が採用しているインターフェイスはIntel ARK等の公式情報に誤りがない限り、対応プロセッサ/チップセットを必須とするIntel Integrated Connectivity(CNVio/CNVio2)ではなくPCI ExpressおよびUSB(Bluetooth用)です。このため、本来であればPCIe/USBで接続される過去のIntel製モジュール(Wi-Fi 6世代のAX200/AX210、Wi-Fi 5世代のWireless-AC 9260など)と同様にIntelプロセッサ以外との組み合わせが可能であるはずです。
しかしながらBE200ではAMDプラットフォームとの組み合わせで動作しない事例が多数確認されており、AMD環境向けWi-Fi 7モジュールの候補としてBE200/BE202を挙げることは難しい状態となっています。
现有WIFI7网卡踩坑+WIFI7实际峰值速率测试 - 电脑讨论(新) - Chiphell - 分享与交流用户体验
- ASUS ROG STRIX B450-I GAMING? + BE200(2024/03, Reddit)
- ASUS ROG STRIX X570-E GAMING? + BE200(2024/03, Reddit)
- ASUS TUF GAMING X570-PLUS + BE200(2024/03, Reddit)
- ASUS PRIME B450M(型番不詳) + BE200(2023/12, Reddit)
- ASUS ROG STRIX B450(型番不詳) + BE200(2023/11, Zhihu)
RedditではSocket AM2(Athlon 64 X2)プラットフォーム上のUbuntu 24.04でBE200が動作し、B550マザーボードで動作しない問題についてチップセット/CPUメーカーのAMD、モジュールメーカーのIntel、マザーボードメーカーのMSIに連絡した際の対応も報告されています。
GIGABYTEがX670E AORUS PRO XやTRX50 AERO D、MSIがHERALD-BE NCM865 WI-FI 7でQualcomm製のQCNCM865を採用し、ドライバ情報からIntel製モジュールを搭載していると見られるASUS PCE-BE92BTはIntelプラットフォームのみをサポートするなど、無線LAN関連製品でも本件に関すると思しき事例が確認できます。
Intel環境における注意事項
Intel製チップセットを搭載し無線LANモジュール用のM.2スロットを備えるマザーボードは多くの場合Intel Integrated ConnectivityとPCI Express x1の両方をサポートしていますが、ごく一部のマザーボードではM.2スロットがCNViのみをサポートし、BE200/BE202などPCI Express接続のモジュールを利用できない場合があります。(Wi-Fi 6以前のPCI Expressモジュールでも同様の状況が発生し得ます)
例としてASRock J4025MはM.2 Key Eスロットを備えていますが、CNViモジュールのみをサポートしPCIe接続のモジュールには対応していない旨が仕様に記載されています。
MediaTek
2024年5月現在、MediaTekからはクライアント向けWi-Fi 7インターフェイスとしてFilogic 380(MT7927)とFilogic 360(MT7925)の2製品が発表済みです。Filogic 380は320MHz幅の通信をサポートする上位モデル、Filogic 360は帯域幅を最大160MHz幅に制限したメインストリームモデルと位置付けられ、それぞれIntel BE200/BE202に相当します。
BE200が単体でも広く流通しているのに対してFilogic 380は単体での流通がほとんど確認できず、GIGABYTE Z790 AORUS MASTER Xの一部リビジョンやLenovo Legion 9 16IRX8など、マザーボードやPCへの搭載事例が見られるのみとなっています。
Filogic 360は2024年春頃から流通していると思われ、2024年5月現在はAliExpressやeBay等で販売されていることが確認できます。
2400mbps MT7925 Wifi7 Wireless Network Card Wifi Adapter for Win 10/11 Linux ко | eBay
Qualcomm
2024年5月現在、Qualcommからはクライアント向けWi-Fi 7インターフェイスとしてFastConnect 7800(WCN785x)とFastConnect 7900(WCN788x)の2種が発表されています。
どちらも6GHz帯において最大5.8Gbps(2ストリーム/320MHz)の通信に対応するほか、MLOで5GHz帯と6GHz帯、もしくは2つの5GHz帯を組み合わせて同時に通信を行えます。Qualcommが「High Band Simultaneous(HBS)」と呼称するこの機能により、2023年に制度が改正される以前の日本のように6GHz帯で320MHz幅の通信が行えない地域でも、6GHz帯と5GHz帯でそれぞれ160MHz幅の帯域を確保して320MHz幅相当とする事が可能です。
FastConnect 7800がモジュール単体で流通している量はMediaTek MT7927に比べるとやや多いと思われるものの、BE200ほどの高い入手性は望めません。搭載製品としては前述したMSI HERALD-BE NCM865 WI-FI 7やGIGABYTE GC-WIFI7(rev.1.0のみ)が存在します。
Realtek
Realtekのクライアント向けWi-Fi 7モジュールとしてはRTL8922A(RTL8922AE)が計画されているようですが、実際の製品は2024年5月時点で確認できません。
Wi-Fi 7 Total Solutions | Realtek
Realtek WiFi 7 and WiFi 6 roadmap for routers and clients - CNX Software